概要
アラビア半島の東端に位置する絶対君主国。
外国人を含む人口は約433万人。石油や石油製品の輸出を主な産業とし、石油生産は日量94万5千バレル(2013年)で世界20位。千夜一夜物語で描かれたシンドバッドは、中国へ航海したオマーン人船乗りがモデルだった。
首都はマスカット。アラビア海(インド洋)とオマーン湾に面し、また、石油ルートとして著名なホルムズ海峡の航路もオマーン領海内に北西にアラブ首長国連邦(UAE)、西にサウジアラビア、南西にイエメンと隣接し、更にUAEを挟んだムサンダム半島先端部に飛地(ムサンダム特別行政区)を擁する。
正式名称はスルタナトゥ・ウマーン)。旧称はマスカット・オマーン土侯
公式の英語表記は、Sultanate of Oman。日本語の表記はオマーン国。通称オマーン。漢字による表記は阿曼。
カブース現国王(スルターン)は絶対君主制を維持しつつも、諮問議会(政治的実権を持たない)設置や毎年の地方巡幸を通じて民心の掌握に努め、その政権の基盤は安定している。産油による、高い国内総生産も政治の安定に寄与している。
日本との関係
現国王スルタン・カーブースの祖父に当たる先々代国王スルタン・タイムールは退位後日本人の大山清子と結婚しており、二人の間の子がブサイナ王女である(現国王スルタンカーブースにとっては叔母にあたる)。
マスカットでは「オマーン・日本友好協会」が日本語教育などの活動を続けている。2001年には、マスカット近郊のナシーブ・マスカット公園の敷地にオマーン平安日本庭園が開園した。GCC諸国では最初の日本庭園である。
2011年(平成23年)3月に東日本大震災が日本で発生した際には、オマーンの王族系の企業から迅速な支援のために南相馬市の落合工機に26億円の発注がされて話題となった。
軍事
陸海空三軍からなる。歴史的にペルシアに幾度も支配された経緯もあり、海軍はイランと接するホルムズ海峡に主力を置いている。植民地であった関係からイギリス軍と関係が深い。イラク戦争やアメリカのアフガニスタン侵攻ではアメリカ軍に協力している。
内陸のオアシス
北西部にはハジャル山地、南部にはカラー山地が連なる。南部にワジ多数。また、飛地としてアラビア湾とホルムズ海峡に臨むムサンダム半島(ムサンダム特別行政区)とマダを領有する。最高地点はアフダル山地のシャムス山 (標高3075m) である。本土北部はオマーン湾とアラビア海(インド洋)に面する。南西海岸沖の40kmにはクリアムリア諸島がある。全土が砂漠気候に属し、ワジを除き通常の河川が存在しない。古代より乳香の産地として知られる。マスカット、ソハール、スールといった都市が北部に、サラーラが南部にある。マスカットの年間降水量は100㎜で、降雨は12月~4月にある。最高気温は5月から9月にかけ35度Cを超える。南部のドファール地域はインド洋のモンスーンの影響を受け6月から9月にかけ降雨が多く、海岸で霧が発生する。ココナツヤシの成長を助ける。
経済
IMFの統計によると、2015年のオマーンのGDPは601億ドルであり、日本の岡山県とほぼ同じ経済規模である。同年の一人当たりGDPは1万5672ドル。
オマーンは先代サイード国王のもとで鎖国的政策が行われ、経済は停滞していたが、1970年に就任したカブース国王は開国を進め、国内経済は大きく成長を遂げた。原油関連設備の近代化による収入の安定はオマーンの成長に大きく寄与している。
オマーンの鉱業の中心は原油生産(4469万トン、2003年時点)で、輸出額の76.7%を占めており、天然ガスも産出する。金属資源としては、クロム鉱石、銀、金を採掘するものの、量が少なく重要ではない。
河川もないにも関わらず、オアシスを中心に国土の0.3%が農地となっている。悪条件にもかかわらず、人口の9%が農業に従事している。主な農産物は、ナツメヤシ(25万トン、世界シェア8位、2002年時点)。穀物と根菜では、ジャガイモ(13キロトン)の生産が最も多い。その他、冬場の日本での生鮮サヤインゲンの流通を補うため、日本向けサヤインゲンの大規模生産も行われている。
また、オマーンは東アフリカ・中東・ペルシア湾岸・インドを結ぶ航路を扼し、戦略的に重要な位置にある。特に南部のサラーラには経済特区や大きなコンテナ港が設置されており、これらの経済政策で外資企業の誘致を進めている。
2010年の調査によると、全人口に占めるオマーン国籍の割合は70.6%、外国人労働者は816,000人を数え、29.4%を占める。大半のオマーン人はアラビア半島に祖先を持つアラブ人であるが、現在のパキスタン南部を起源とするバローチ人や中央アジアやイランを起源とするアジャム人のほか、東アフリカにルーツを持つものもいる。外国人労働者のうちインド人が465,660人を数える他、バングラデシュ人が107,125人、パキスタン人が84,658人などとなっている。家政婦として働くインドネシアやフィリピンから来た東南アジア人女性も多い。外国籍のアラブ人は68,986人を数える。
言語
言語は公用語がアラビア語であるが、バローチ語や南アラビア諸語のシャフラ語も広く使われる。その他、スワヒリ語や外国人労働者の言語(ヒンズー語、シンド語、ウルドゥー語、タミル語、タガログ語)なども使われている。また、イギリス植民地であったことから英語は広く使われている。アラビア語の口語(アーンミーヤ)として、オマーン方言、ドファール方言、シフフ方言、湾岸方言が使われている。
宗教
宗教はおよそ3/4がイスラム教のイバード派、1/4がスンナ派に属している。さらに、外国人労働者の間ではヒンズー教やキリスト教が信仰されている。